⑧NPO法人 タンポポ福祉会 あしたばの家

 「安心して食べていただけるよう材料は全て国産で、ベーキングパウダーも使っていません。施設の利用者が一つ一つ丁寧に作っています」。障害者の自立支援施設「あしたばの家」を運営する NPO法人タンポポ福祉会の理事長、 古田政吉さんは、自慢のマドレーヌを手に笑顔を見せます。

 前理事長に請われて、3年ほど前から「あしたばの家」を手伝うようになった古田さん。当時、施設利用者たちは、電機部品を仕上げる班、靴下の値札を付ける班、喫茶室を運営する班に分かれて作業を行っていました。「喫茶班は喫茶室で出すクッキーも焼いていたのですが、お客さんが少なくて。喫茶室運営に代わって主業となるような商品の開発が急務だと感じました」と振り返ります。

 2013(平成3)年4月、理事長に就任した古田さんは旧知のコープ自然派に相談。すると、「マドレーヌを作ってみませんか」という言葉が返ってきました。「コープ自然派が扱う商品は安全面も味も一流のものばかり。そこに並ぶるのを作ることができたら、施設利用者たちの自信にもつながるのではと思いました」


  早速、女性職員が中心となってマドレーヌの開発に取り掛かりました。試作したレシピを基に施設利用者たちが製造し、味や形を確かめます。時間がたってしぼまないように生地の混ぜ方を加減したり、焦がしバターを加えてこくを出したり。試行錯誤は半年続き、1月、ついにどこにも負けないと胸を張れる品質のものが完成。初納品を果たしました。

 2年前に施設の建物を新築したのに伴い、菓子製造作業室は広さ8平方メートルのゆとりあるスペースに。オー ブンなどの厨房設備もさらに整いました。「自分たちが作ったマドレーヌがたくさんの人に届いている。それは彼らにとって社会とつながっている証しです」と古田さん。これからも消費者に向けて、自慢のマドレーヌを届けます。 広く清潔感のあふれる作業室では、施設利用者たちが一心に作業を進めています。