⑫橋本有機農園

 丹波市市島町は全国でもいち早く有機農業を取り入れた。有機の里です。 前職の新人研修で同町を訪れた橋本 慎司さんは、有機農業に励む生産者 と、共同購入で生産者を支える消費者 の姿に感銘を受け、「生産者として有機の里の一員になりたい」と移住し就農。 1989(平成元)年のことでした。
 

 実践するのは有畜循環型の有機農業 です。畑から車で5分ほどの所にある 鶏舎で約200羽のニワトリを平飼いし、その堆肥で農産物を育てています。 ニワトリは野草を餌に育ち、その糞尿 は土の中で虫や微生物によって分解れ良質の堆肥となるのです。「キャベツ の外葉など名無駄にせず与えます」 と橋本さん。野生の草や家畜の糞尿、 農産物の残りなど、地域の有機物資 源が全て堆肥となり、抵抗力のあるいい 土壌をつくることにつながっています。
 

 畑にはワケギやナノハナ、ソラマメ、 ニラ、チンゲン菜、サトイモなど多品種が少量ずつ植わっています。以前は経営面も考えて品目を絞り、それぞれを大量に生産していました。その方針を変えたのが 6年前の丹波の大水害でした。 畑も鶏舎る土砂に埋まった光景を目 の当たりにし。境に負荷をかけない 有機農業の重要性を実感。寄り添う形で、時季に合った多品種の野菜を栽培することにしました。「虫害などのリスクを分散させることもできます」

 そして費者側も自然の流れに合わせてライフスタイルを変えていく必要があるといいます。「その時期に取れる旬の有機野菜を食べることは、生産者の支援、ひいては地球環境の保護につながります」。その考えはイベントやセミナーの場で発信しています。

  有機農業を志す人々の受け入れも行っている橋本さん。今までに5人を送り出しました。「今後は新規就農を目指す外国人を後押ししたい。多様な価値観の人が交ざっている方が地域は成長しますから」と、そのまなざしは常に前を向いています。